読書メモ『爆速成長マネジメント』イラッド・ギル(著)

『爆速成長マネジメント』イラッド・ギル(著) を読んだので、書籍から得た知見をご紹介します。

『爆速成長マネジメント』イラッド・ギル(著)

背景 マネージャー向け推薦図書

約1年前に読了していたのですが、社内でマネージャー向けの推薦図書として扱うことになったので、今更になりましたが読書メモを公開することにしました。

以下、印象に残った箇所の引用とメモです。

第1章 CEOの役割

共同創業者の機能・役割変更について

経営陣の体制移行で最も大きい影響が出るのは、共同創業者の役割が変わることだ。創業初期のスタートアップの多くでは、共同創業者全員がすべての決定に関わる。会社が成長するに従い、意思決定の範囲と各人の役割をより厳密に定義する必要がある。

📝 共同創業者の機能、役割変更について

共同創業者の役割変更には、基本的に3つの結末が待っている。
・共同創業者が経営陣ではなく個人として関与する形に変わり、そこでハッピーに過ごすケース(アップルのスティーブ・ウォズニアック)。
・共同創業者が主要な経営陣として会社に残り、CTO(最高技術責任者)、プレジデント、プロダクト担当バイスプレジデント、その他の役職で会社の成長に貢献し続けるケース。
・会社への影響力の低下に不満に感じた共同創業者が離脱するケース。CEOにいずれなりたいが直近で見込みがないと感じたり、本人の望む役割とスキルにミスマッチがあったりする場合に発生。一部では病気の家族の世話や配偶者の都合で引っ越しをするなど、家庭の事情で離れるケースもある。

📝 共同創業者の役割変更の3つの結末

第2章 取締役会のマネジメント

独立系取締役の選任

4 候補者をよく知るための時間を惜しまない。
投資家は取締役を早く決めろとプレッシャーをかけてくる。しかし、最適な人物に出会うまで何か月もかけることをためらってはいけない。その場しのぎで無能なエンジニアを採用しないのと同じだ。社員よりも取締役の方が排除しにくいため、より慎重に取り組む必要がある。あらかじめ取締役候補と話す議題を整理しておくことをお勧めする。
・会社の向かうべき方向性を話し合う。創業者が実現したいビジョンやアプローチと噛み合っているか。重要な知見や興味深いフィードバックを得られるか。
・どう貢献してもらうかを話す。積極的に関わる領域はどこか。得意なことと苦手なことは何か。
・目標や展望について話し合う。候補者がキャリアや人生で成し遂げたいことは何か。その目標に対し、取締役の就任がどのように影響するかを確認する。

📝取締役候補者をよく知るための方法

5 個人的な信頼関係と姿勢を確認する。
(中略)
取締役の候補として、次のような態度をとる人物は要注意だ。
・創業者を「ガキ扱い」し、自身を「大人の監視役」と考える恩着せがましい年寄りの管理型経営幹部。このような人物の口車にのせられると、判断を誤ったり、創業者がCEOから外されたり、CEOがビジョンなしの「管理者」に差し替えられたりする危険がある。
・取締役を創業者の上司だと勘違いするマイクロマネジャー。
・事業成長への興味よりも役職による金銭報酬に意識が向いている人物。
・取締役になるのが目的の人物。取締役になることで自身の威厳が増すと考えたり、就任を利用して他の複数企業の取締役になろうと行動し始める人物。
・会社の投資家陣と人脈を築きたいと考える人物は、投資家に気に入られるために創業者を裏切るような最悪のケースも想定しなければならなくなる。
・VCの手先。(注)に詳細を説明する。取締役あるあると言えるほど頻繁に起き、かつ対策が重要であるため別途説明する。

📝取締役候補者の要注意人物リスト

第4章 経営チームをつくる

INTERVIEW 経営幹部の採用、マネジメント、解雇

経営幹部を採用する時は、 12~ 18か月先に求める経験を持つ人物を探すのが望ましい。それよりも短期で考えると採用コストと拡大スピードが噛み合わない。それより長期で考えるとやるべき仕事に対してオーバースペックな人物を雇ってしまうことになり、業務内容に合わなくなる。

📝経営幹部は12〜18か月先の未来のための採用

リファレンスチェックをすればその答えが出ます。また、経営幹部を採用する際には徹底的にリファレンスチェックを行うべきです。一般社員が死ぬほどリファレンスチェックをされない理由は理解できますが、経営幹部を徹底したリファレンスチェックなしで採用すべき理由など存在しません。
リファレンスチェックで必ず聞くべきなのは「この人がうちの会社に入社したら、あなたも入社してくれますか」という質問です。

📝リファレンスチェックで必ず聞くべきなのは「この人がうちの会社に入社したら、あなたも入社してくれますか」という質問

ギル:私は創業者によく、経営幹部の採用では失敗しても構わないと伝えています。失敗の恐怖は行動を妨げてしまうからです。経営幹部としてうまく機能しているか判断するには何を見るといいでしょうか。また、失敗の兆候にどれだけ早く気づけるものでしょうか。

ラボワ:経営幹部なら 30日以内で大体わかり、 60日経つ頃には確実にわかります。当然、事業の複雑さによっても変わります。

📝経営幹部の採用は失敗しても構わない。

CEOや創業者の役目は、彼らが活躍できるように援護することです。援護は義務と捉え、新しい経営幹部が活躍するようにあらゆる手を尽くすべきです。残念ながら、そうしない創業者もいます。「優秀な人を雇ったんだから、勝手に仕事を推し進めてくれるだろう」と思い込んでしまうのです。新しい経営幹部が順応するために自身の予定の 10~ 20%を割くことは、明らかに価値のある初期投資だと私は思います。

📝創業者の役目は経営幹部が活躍できるように援護すること。

失敗率ゼロの採用を目指した場合、それは失敗率ゼロの意思決定と同義なので、保守的すぎます。VCとしては経営幹部を採用する確信度が 70%になった時に踏み込むべきだと投資先に伝えていて、私自身もその意見に賛同しています。 50%以下では無謀。でも100%では慎重になりすぎで、候補者を逃している恐れがあります。失敗率も下がりますが、機会損失も多く発生します。採用すべきだった人を逃す機会損失について指標を設定している人はそう多くないでしょう。

📝失敗率ゼロの採用は保守的すぎる。

ギル:経営幹部の採用失敗は何回まで許されますか。役職ごとに一定数の失敗なのでしょうか。年間の失敗の合計数なのでしょうか。

ラボワ:1回くらいではないでしょうか。経営幹部を増やす機会はそんなに多くないですし、ほとんどの企業は決めた期間にひとりから3人程度を採用するのではないでしょうか。何回も採用ミスをしたら、採用プロセスそのものを疑った方がよいでしょう。1回の失敗は普通です。

📝経営幹部の失敗は年間1回までなら許される。

ギル:創業者がチームを再構築する際に一番恐れるのは離職リスクだと思います。直属の部下との間に誰かを挟んだり、外部から人材を入れると、社員が辞めてしまうのではないかと気にします。この問題を避けるにはどうすればいいですか。そもそも課題として捉えるべきでしょうか。実は離職しても問題ないのでしょうか。

ラボワ:離職リスクは悩ましく、創業者たちが判断を先延ばししてしまう理由でもあります。階層をつくって間に人を挟む時は、その新しい人物が明らかに優れている場合のみにするのがよいでしょう。

📝創業者がチームを再構築する際に一番恐れるのは離職リスク

第5章 爆速成長期の組織構造

組織の穴を埋める「ギャップフィラー」という仕事

📝ギャップフィラーと

第8章 資金調達と企業評価額

INTERVIEW 株式公開する理由

ギル:(中略)最近の創業者は株式公開にあまり前向きではありません。株式公開を経て公開企業になることのプラス面とマイナス面についてどうお考えですか。

ラボワ:私の考えは非常にシンプルで、なるべく早く株式公開した方がいいと考えています。上場企業としての責任を果たし、透明性を持った情報開示をすることは会社にとって有益です。これは私がいつも経営陣に伝えていくことです。株式公開の準備をする過程で、社内の規律ができ、事業への集中力が高まります。
また、IPOで様々な可能性が開けます。一度株式を公開すると、資金調達や買収、M&Aをする時に、多くのツールや手段が使えるようになるのです。

📝なるべく早く株式公開をした方がいい。

第9章 M&A

INTERVIEW ユーザーと世界のために、責任を持ってスケールする

これまでは何が何でもスケールすることが目標でした。シリコンバレーはずっと、既存のものを壊してでも素早くプロダクトを改善できるハッカー起業家を支援することにこだわっていました。しかし、このような「何が何でもスケールする」考え方は、人々の日常生活に大きな影響を与える領域で責任ある事業をつくることとは相性がよくありません。
私は、たとえ多少グロースを犠牲にしてでも、顧客ニーズを深く理解し、責任を持ってプロダクトを提供することが大事だと思う起業家を支援したいと考えています。

📝何が何でもスケールさせる考え方は社会的責任の大きい事業と相性がよくない。

大きな市場でサービスを提供している従来の大企業は社会的責任という考え方を持っています。今日、シリコンバレーで立ち上がるスタートアップは、スタートアップなりの社会的責任を負う必要があります。それには、プロダクトで使用しているアルゴリズムや機械学習について透明性のある情報発信をすること、それから企業の成功が差別や偏見などを利用したものではないか確かめる測定システムを持つことが重要であると私は考えています。

📝スタートアップなりの社会的責任=利用技術の透明性ある情報発信

以上、『爆速成長マネジメント』が推薦図書な現場からお送りしました。