『人生後半の戦略書 ハーバード大教授が教える人生とキャリアを再構築する方法』を読んだので、ご紹介します。
山田進太郎さんの 考え方を変える「人生後半の戦略書」 – suadd blog を読んで、気になって読んでみました。
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現実をお伝えしましょう。高いスキルを要する職業であればほぼ例外なく、30代後半から50代前半にキャリアが落ち込みはじめます。耳が痛い話ですみません。でも、もっと悪い話があります。ピークが高ければ高いほど、キャリアは落ち込みはじめたら一気に落ち込むようなのです。
起業家は、ピーク年齢に関する興味深い例と言えます。テック企業の創業者は20代で莫犬な名声と富を手に入れることが珍しくありませんが、30歳までに創造力が衰えることが多いのです。
『ハーバード・ビジネス・レビュー』誌の報じるところでは、ベンチャーキャピタルから10億ドル以上の出資を受けた企業の創業者の年齢は、20歳から34歳に集中する傾向があり、35歳以上は少数です。他の学者はこの結果に異議を唱え、急成長しているスタートアップの創業者の平均年齢は、実際は45歳だと主張しています。それでも肝心の結論は変わりません。中年期に入ると、起業家としての能力はガタ落ちになるのです。
📝急成長しているスタートアップの創業者の平均年齢は、実際は45歳。
中年期に入ると、前頭前皮質の働きが落ちます。それにより、次のような影響が考えられます。
第1に、前述の落ち込みの根拠を見れば予測できるとおり、素早い分析や創造的な発明がしにくくなります。第2に、マルチタスク処理など、以前は簡単にできたいくつかのことがひどく困難になります。年配の人は若者よりかなり気が散りやすいのです。10代の子どもがいる(いた)人は、「音楽を聴いたりメールを打ったりしながら勉強するのは、効率が悪いからやめなさい」と子どもに言ったことがあるかもしれません。しかし実は、「ながら勉強」ができないのは、子どもではなく、あなたなのです。だからむしろ、自分の助言を自分で実践し、スマートフォンと音楽を切り、完全に無音の場所に行って考え働けば、認知力が高まります。
もう一つ困難になるのが、名前と事実を思い出すことです。
📝中年期に入ると起きること。
1971年、キャッテルは『Abilities: Their Structure, Growth, and Action(能力:その構造と成長と作用)』を出版し、「人には2種類の知能が備わっているものの、各知能がピークを迎える時期は異なる」と提唱しました。』
📝「人には2種類の知能が備わっているものの、各知能がピークを迎える時期は異なる」
うち1つ目の知能が、「流動性知能」です。キャッテルの定義では、推論力、柔軟な思考力、目新しい問題の解決力を指します。一般的に、生得的な頭の良さと考えられている知能で、読解力や数学的能力と関連があることが研究で明らかになっています。革新的なアイデアや製品を生み出す人は、概して流動性知能が豊かです。知能テストを専門としていたキャッテルの観察では、流動性知能は成人期初期にピークに達し、30代から40代に急速に低下しはじめました。
📝「流動性知能」
知能は流動性知能だけではありません。「結晶性知能」も存在します。結晶性知能とは、過去に学んだ知識の蓄えを活用する能力です。再び大図書館になぞらえて考えてみましょう。ただし今回は、レファレンス係の仕事が遅いと嘆くのではなく、レファレンス係がうろつきまわる空間にある蔵書の膨大さに、目を見はってください。多少の時間はかかるにせよ、レファレンス係が目当ての本の所在を知っていることがいかにすごいことか、考えてみてください。
レファレンス係の働き方を見れば分かるように、結晶性知能は知識の蓄えに依存するため、40代、50代、60代と年齢を経るほど向上します。仮に減少するとしても、人生の終盤になってからです。
📝「結晶性知能」
流動性知能だけを頼りにキャリアを積んでいれば、かなり早期にピークと落ち込みを迎えますが、結晶性知能の必要なキャリアを積んでいるか、もっと結晶性知能を活かせるようにキャリアを再設計できれば、ピークが遅れる代わりに、落ち込みの時期も(来ないとは言わないまでも)かなり先に延ばせるのです。
📝流動性知能 + 結晶性知能でピークの落ち込みの時期を先延ばし。
キケロは歳を取ってからの生き方について3つの信念を抱いていました。 第1に、ぐうたらせずに、奉仕に専念すべきであること。 第2に、晩年に恵まれる最大の強みは知恵であり、学習と思考から生み出す世界観によって、他者を豊かにできること。 第3に、晩年ならではの才能を活かす手段が相談を受けることであり、お金や権力や名声といった世俗的な見返りを狙わずに、他者を指導、助言、教育すべきこと。
📝歳を取ってからの生き方
私がこれまで見てきた中で、特にたちが悪く毒性の高い依存症は、仕事依存症です。「仕事依存症」という言葉は、1960年代に心理学者ウェイン・オーツによって生み出された造語です。
仕事依存症は、仕事で成功している人たちによく見られる特有の症状です。『ハーバード・ビジネス・レビュー』誌によると、アメリカの労働者の週間労働時間が平均44時間なのに対し、アメリカのCEO(最高経営責任者)の週間労働時間は平均62・5時間となっています。
📝アメリカの週間労働時間
経済学の研究では一貫して、1日あたりの労働時間が8時間もしくは10時間を超えると限界生産性が低下する、という結果が出ています。
📝1日あたりの労働時間が8時間もしくは10時間を超えると限界生産性が低下する。
仕事依存症も同じです。仕事依存症の人が本当に求めているのは仕事そのものではなく、「成功」です。身を粉にしてまで働き、手に入れたいのは、お金であり権力であり威なのです。なぜなら、それは世間から承認され、喝采され、賞讃されていることの表れであり、コカインからソーシャルメディアまであらゆる依存性のあるものの例にもれず、神経伝達物質のドーパミンを刺激するからです。
📝仕事依存症の人が本当に求めているのは「成功」。
自分よりも成功している人を見ると負けた気になる、と打ち明ける成功依存症の人がたくさんいます。成功は基本的に地位的なもの、つまり社会的地位を高めるものです。社会科学者たちは何十年もの間、地位財では幸福になれないことを明らかにしてきました。「お金が欲しいのは、必要なものが買えるからで、それ以上の理由はない」と人々は口をそろえますが、そのお金でさえも、比較的低いレベルを超えると、地位を高める手段としての要素が大きくなります。かつてダライ・ラマの言葉を聞いてそのとおりだと思ったのですが、人は10本しか指がないのに20個の指輪を買います。そうやって地位を高めるのが、私たち人間の生来の習性なのです。
📝成功依存症
成功は基本的に地位的なもの、つまり社会的地位を高めるもの。 人は10本しか指がないのに20個の指輪を買う。 地位を高めるのが、私たち人間の生来の習性。
リセットをする今問うべきなのは、次のマシュマロは具体的に何かです。新しい犠牲を払うにあたって、自分が何を求めているのか、分かっていますか?
📝マシュマロテストの文脈で「次のマシュマロは具体的に何か?」を考えたい。
目的がお金であれ、権力であれ、威倍であれ、仕事が手段と化せば、不幸が待っています。
📝仕事が手段と化せば、不幸が待っている。
楽しさと意義の重なる領域が興味です。多くの神経科学者の見解によれば、興味は大脳辺縁系で処理される、原始的なポジティブ感情です。本当に興味を引くものは強い快感をもたらします。そして、意義のないものに興味を持ち続けることはできません。ですから、「この仕事に心から興味を引かれるか?」と問いかけると、新しい活動が自分のマシュマロかどうかを測る有効なリトマス試験紙になります。
📝楽しさと意義の重なる領域が興味。
「この仕事に心から興味を引かれるか?」
はたしてどのパターンが最善なのでしょうか?あなたはこれまで超直線型のキャリアを送ってきたかもしれませんし、それはそれで構いません。でも、第2の曲線に移ろうとしている今は、らせん型キャリアのほうが適しているでしょう。具体的には、過去に求めていたものではなく、今本当に求めているものについて考える。金銭的な報酬に対する期待を下げる。周りから「威信が下がった」「過去の経験やスキルを分かりやすいかたちで活かしていない」と思われることを恐れないということです。
📝キャリアは、今本当に求めているものについて考える。
以上、人生後半の戦略書をもとに考えていきたい、現場からお送りしました。