読書メモ『ビジネススクールでは学べない世界最先端の経営学』

Tadashi Shigeoka ·  Sun, April 5, 2020

『ビジネススクールでは学べない世界最先端の経営学』を読んだので、ご紹介します。

Part3 先端イノベーション理論と日本企業

第7章 「チャラ男」と「根回しオヤジ」こそが、最強のコンビである

経営学ミニ解説 知の探索

しかし、組織はどうしても知の深化に傾斜し、探索をなおざりにする傾向があります。これは短期的には効率性を高めるのですが、その結果、中長期的なイノベーションが枯渇することをコンピテンシー・トラップと呼ぶと、述べました。

📝コンピテンシー・トラップ = 知の深化に傾斜し、探索をなおざりにした結果、中長期的なイノベーションが枯渇すること

発見1:メンバーが組織の考えを学ぶスピードが遅いほうが、最終的な組織全体の学習量は増加する。

これは、マーチの1991年論文以前から指摘されてきたことなのですが、メンバーが組織から学ぶスピードは、実は早いほうがいいとは限りません。なぜなら、組織から早く学んでしまうと、メンバーが組織の考えに「染まって」しまい、知の探索が起きなくなるからです。結果として、最終的な組織としての学習量は減ってしまいます。私たちはなんとなく「学習は速い方がいい」と思いがちですが、ゆっくりと学ぶスロー・ラーナー( Slow learner)が組織にいるほうが、組織全体の知の探索には向いているのです。

📝Slow leaner

発見3:組織のメンバーは一定の比率で入れ替えがあったほうが、組織の最終的な学習量は増加する。

メンバーが入れ替われば、新しく来たメンバーは組織の考えに染まっていないため、知の探索を起こすからです。日本でもよく「組織に新陳代謝が必要」と言われますが、この結果はまさにそれを示しています。

📝組織に新陳代謝は必要。

Part4 最先端の組織学習論

第8章 組織の学習力を高めるには、「タバコ部屋」が欠かせない

大事なのは「情報の共有化」ではない

トランザクティブ・メモリーは、世界の組織学習研究ではきわめて重要なコンセプトと位置づけられています。その要点は、組織の学習効果、パフォーマンスを高めるために大事なのは、「組織のメンバー全員が同じことを知っている」ことではなく、「組織のメンバーが『ほかのメンバーの誰が何を知っているのか』を知っておくことである」というものです。英語で言えば、組織に必要なのは Whatではなく、 Who knows whatである、ということです。

📝Who knows what

トランザクティブ・メモリーはパフォーマンスを高める

では、どうすればトランザクティブ・メモリーを高めることができるのでしょうか。真っ先に思いつくのは、やはり組織メンバー間のコミュニケーションを増やすことでしょう。もちろん大企業になるほど、社員の間で交流を図ることは難しくなるわけですが、いまでは社内メールや社内イントラネットを活用することで、バーチャルなコミュニケーションを促し、互いの「誰が何を知っているか」を共有することができるかもしれません。

📝組織メンバー間のコミュニケーションを増やす。

大事なのはメール・電話か、直接対話か

注目すべきは、もう一方の結果です。では、どのようなチームがトランザクティブ・メモリーを高めているかというと、それは「直接対話によるコミュニケーションの頻度が多いチーム」に限られたのです。それどころか結果の一部からは、「メール・電話によるコミュニケーションが多いことは、むしろ事後的なトランザクティブ・メモリーの発達を妨げる」可能性も示されました。

📝トランザクティブメモリーを高めるために、直接対話の頻度を高める。

第9章 「ブレスト」のアイデア出しは、実は効率が悪い!

ブレストではアイデアを出せない

「アイデア出しが目的のはずのブレストが、アイデアを出すのに効率が悪い」ことは、「プロダクティビティー・ロス」という矛盾として、経営学や社会心理学では古くから知られてきました。

📝ブレストは、アイデアを出すのに効率が悪い。

ブレストは組織の記憶力を高める

第一に、IDEOでのブレストには「組織(IDEO)全体の記憶力を高める」効果があることです。

📝ブレストは組織全体の記憶力を高める。

ブレストはメンタルモデルを揃える

ブレストの第二の役割は、参加メンバーが組織の「価値基準・行動規範」を共有しやすいことです。

📝ブレストは参加メンバーのメンタルモデルを揃えることに役立つ。

第10章 「失敗は成功のもと」は、ビジネスでも言えるのか

経営学ミニ解説 トランザクティブ・メモリー

一方でトランザクティブ・メモリーは、組織の情報共有で重要なのは「組織の全員が同じことを覚えていること」ではなく、「組織の誰が何を知っているかを、組織の全員が知っていることである」という考えです。英語で言えば、一人ひとりが覚えるべきは「 Whatではなく、 Who knows whatである」ということになります。

📝Who knows what

「誰が何を知っているか」を覚える程度なら、それは人の情報処理力でも十分に可能です。例えば、各社員が「このことは自分では分からないけれど、あの部署の彼なら知っているのではないか」と思い出せることです。

📝人の情報処理力で十分可能。

一般にトランザクティブ・メモリーが高い組織・グループはパフォーマンスが高くなる傾向が分かっています。

📝組織のパフォーマンスが高くなる。

近年の経営学では、フェイス・トゥ・フェイスでの交流を直接持つことが、トランザクティブ・メモリーを高めやすいという研究成果が挙がっている

📝f2f

Part7 科学的に見るリーダーシップ

第15章 これからのリーダーシップに向くのは、どのような人か

リーダーシップには2種類ある

その二種類とは「トランザクティブ・リーダーシップ」と「トランスフォーメーショナル・リーダーシップ」です。欧米のリーダーシップ研究者で、この区分けを知らないものはいない、と言ってもいいかもしれません。

📝2種類のリーダーシップ。

トランザクティブ・リーダーとは、部下の自己意思を重んじ、まさに取引のように(=トランザクティブ)部下とやりとりするリーダーです。部下に対して「アメとムチ」をうまく使えるタイプのリーダー、ともいえます。

📝トランザクティブ・リーダーは、アメとムチを上手く使える。

トランザクティブ・リーダーシップは三つの資質に分解されることも分かっています。第一は「コンティンジェント・リワード」です。日本語では「状況に応じた報酬」とでも呼べばいいでしょうか。

これは、成果をあげた部下に対して正当な報酬をきちんと与えることです。ここでいう「報酬」は金銭的なものや昇進だけでなく、例えば「よくやった」と声をかけるようなことも入ります。いずれにせよ、部下が自分の成果に対して「きちんと評価されている」と満足できることで、そのさらなる行動・成果を促すことを意味します。

📝1. 状況に応じた報酬

第二と第三の資質は関連しています。両方とも英語では「マネジメント・バイ・イクセプション」というのですが、それがさらに第二の資質「能動型」と第三の「受動型」に分かれます。こう書くと抽象的ですが、要はどちらも「部下が犯す失敗にどう対処するか」ということです。

能動型は、部下が何か問題を起こす前に「そのままだと失敗するぞ」と介入するタイプのことです。受動型は、部下が失敗しそうでも敢えてそこで介入せず、実際に失敗してから問題に対処するタイプのリーダーです。。

この三つの資質は、必ずしも互いに相いれないものではなく、一人のリーダーが複数の資質を持ち得ます。

📝部下が犯す失敗に能動的/受動的に対処する。

トランスフォーメーショナル・リーダーシップとは

先のトランザクティブ型リーダーは「アメとムチ」を重視しますが、トランスフォーメーショナル型リーダーが重視するのは「啓蒙」です。

📝啓蒙

このタイプのリーダーは、四つの資質から構成されます。すなわち(1)組織のミッションを明確に掲げ、部下の組織に対するロイヤルティーを高める、(2)事業の将来性や魅力を前向きに表現し、部下のモチベーションを高める、(3)常に新しい視点を持ち込み、部下のやる気を刺激する、そして(4)部下一人ひとりと個別に向き合いその成長を重視する、の四つです。

よくいわれる「カリスマ型リーダー」は、これに近いかもしれません

📝カリスマ型リーダー

リーダーシップの種類は、業績に影響する

このように全般的な傾向として、「相対的に『トランザクティブ型』よりも、『トランスフォーメーショナル型の4資質』を持ったリーダーのほうが、高い組織成果につながりやすい」という結果になっているのです。

📝トランスフォーメーショナル > トランザクティブ

トランザクショナル型の資質の中では、コンティンジェント・リワードが高い組織成果につながります。他方、一般に組織成果につながりにくいのは「マネジメント・バイ・イクセプションの受動型」というのが、私の理解です。

📝コンティンジェント・リワード > マネジメント・バイ・イクセプションの受動型

以上、ザ・スタートアップな環境で腹を括った勝負をしていきたい、現場からお送りしました。